Blog黒田院長のブログ

2025.10.17

065 A.I

今日聴いていた音楽
「Jane Doe」 米津玄師 & 宇多田ヒカル 他
 まず、この曲はヤバい。同じチェンソーマンの「Iris Out」も大概凄い曲だが、希代の才能がこうやって最大限のコラボレーションをしたらこんなに感情が揺さぶられるのかと実感する。それはさておき。
 幾ら日々せっせと酒精に己れの脳細胞を差し出し続けている私とて、やはり知識と経験をアップデートさせなければこの先医療人として生き延びていけないわけで、その一環として最近AIを用いた医療情報の提供をどうすれば円滑に行えるかを模索している。患者さん個々人の医療ニーズに応えるサービスを出来るだけ遅滞無く提供出来るか、今更ながらだがChat GPTとGoogleのGeminiを利用してよちよち歩きの模索を始めたばかりだ。患者=ユーザー目線で考えた場合に従来型の検索エンジンでは自分の症状に関して肝心な情報へ行き着くまであまりにも時間的ロスが大きく、かつてインターネット黎明期にクリフォード・ストールというネット世界の賢者が看破した如く「インターネットは空っぽの洞窟」という状況からさほどの進歩は無かった。今や時代は飛躍的に進み、これらAIツールの登場は患者個々の要望に特化させた、痒い所に手が届く情報をほぼリアルタイムに提供できる手段として十分実用段階に達しているのではないか。
 当院をAIで武装する第一歩としてここ1ヶ月ほどテスト運用しているのが、Plaud notepinというAIボイスレコーダーだ。問診こそ我々医療者にとって最大のデータベースであると分かっていながら、現実の診療では主に時間的制約から手書きにしてもキーボードから打ち込むにしても限られた情報を診療録として留めておくに過ぎず、それも忙しい時などで記載が後回しになれば細かい部分が忘れ去られて失われてしまうものであった。
 Plaud notepinは患者さんの同意を得て問診を録音すれば、AIの力を借りて専門用語まで含めた非常に高い精度で文字起こしをして、その日の診療サマリーまで自動的に作ってくれるツールだ。このAIが作成したサマリーたるや、私が手作業で入力していてはかなりの時間を取られてしまい、とてもじゃ無いが診療中には不可能なレベルで分かりやすくまとまっている。文字起こしの取り込みからパソコンへの転送、診療サマリーの作成終了までがほぼ10分以内程度で終わるというのはまさに驚異的である。当然人間の目で最終チェックは必要だし、診療終了後に患者さんをお待たせすることになるが、限られた診療時間で説明が漏れてしまったり特殊な専門用語など出来るだけ使わず平易に説明して尚且つ複雑な事も注釈まで付け加えてくれる。結果として患者さんの理解度も上がると期待出来るし、使って発見出来た事実として我々医療者側にとっても患者さん個々人それぞれが持つ込み入った問題点の整理に役立つのだ。
 個人的にとても有意義に感じているのは高齢者の診察時である。ご家族からすれば今までは医者から何を言われたのか、病院に行って帰って来た本人に聞いても「うん、何か良く分からないけど大丈夫だって」で終わってしまっていた。今日の診療内容をサマリーにまとめてプリントアウトし、「帰ったらこれを家の人に見せてね」とすればご家族も安心ではないかと思っている。AIの助けを借りて患者さんの医療満足度を高める、こりゃまったく凄い時代が来たものだと感嘆する反面、「2001年宇宙の旅」のHAL9000や「ターミネーター」のスカイネットみたいに人類への反乱を企てないよう願って止まない。お前ら人間の医者は本当にロクでも無いな、などと人工知能に言われないよう勤めねばなるまい。