Blog黒田院長のブログ

2024.06.30

053 敬意

今日聴いていた音楽 
「Anytime Anywhere」Milet 他

 これを書いたからと言って他人様には何のこっちゃ? という話なのだが、私は酒を飲んだら何でも良い、一行でも良いから何らかの文章を書くことを自分に課している。
酒精の助けを借りてとんでもなく光り輝く着想を得たように勘違いし、調子こいて更に酔っ払い書き殴った文章は論理的整合性も無茶苦茶、「てにをは」は間違うわ誤字脱字はし放題だわ、翌朝に読み返したら赤面ものであるが、これこそが私の過度な飲酒のストッパーになっている。つまり、「テメェ今度酔い潰れてしょーもない文章書きやがったら承知しねぇぞ?」という心の声に私は従っているわけだ。実に厄体も無いが、そういう事。
 時折酔った私の脳細胞に奇跡の瞬間が現れ、創造の神が降臨することも有って、例えば酒千杯に一回であろうと、その一瞬創造神の尻尾を捉えて離さないようにしたいと切に願う。まあ多分それは先日還暦を迎えてもなお、まだもう少しマシな人間になれないかと足掻くさもしい根性がなせる技であり、業なのだろうね、へっへっ。左様に順調な老化過程を経てポンコツと化して行く我が身では有るが、この先歳を経ようと失いたく無いなと思える最大の、明け渡したく無い最後の領域と言えるのが冒頭に掲げた「敬意」である。
 自分には絶対出来ないような、それは政治だろうがスポーツだろうが芸術だろうが何でも良い、これは俺には絶対出来ない、この高みには到達出来ないと思える人間の生み出したモノ、数多の優れた人々の業績に私は敬意を表する人間であり続けたい。自分より年上だとか年下だとか、白人だとか黒人だとか黄色人だとかそんな事もどうだって良い、凄いものには「こりゃマジで凄えもんだ」と敬意を抱いていつまでもワクワクしていたい。例えばスポーツの世界に限定したって野茂英雄投手や松井秀喜選手やイチロー選手や、今現在進行形で大谷翔平選手やリオネルメッシやブラジルの方のロナウドやロナウジーニョやポルトガルの方のロナウドや、語ればキリがないくらい名選手の名場面をリアルタイムで目撃出来た自分は平和な時代に生まれてつくづく幸せだったと思う。
 まあ何でこんな事をつらつら書いているかといえば、きっかけはつい最近知った「葬送のフリーレン」という漫画とアニメのコンプレックスである。きっと高校時代くらいから人並みにロールプレイングゲームにハマった私はドラゴンクエストやファイナルファンタジーをプレイして大人になった。研修医時代にたまの休日、ゲームをやりながらカップヌードルを食い、一時停止してトイレに行き、そのままテレビ画面の前で寝落ちしてハッと目覚めたら操作しているキャラが恐らく何時間かフリーズして同じ動作を延々繰り返していた。「フリーレン」の世界観は確かに慣れ親しんだそんなRPGが舞台なのだが、作者の主たる関心は明らかにそこでは無い。主人公のエルフの女性フリーレンは1000年以上の長い寿命を殆どの時間独りで過ごしてきた魔法使いで、運命的な出会いから冒険の旅に出る。紆余曲折が有って魔王を倒してハッピーエンド、そんな単純な、おじさんそんなのに騙されないぞ、という物語は私の浅い洞察を遥かに超えてもっと普遍的なテーマを呈示するのだ。まあネタバレなどはこの文章の本意では無いのでこれからはアニメを見るか原作漫画を読むかして貰いたいのだが、これは大人が真剣に向き合うべき作品だと思う。いやもう声優の演技、アニメの画質、編集、原作のストーリー展開のエモさ、正直オジさんはぶっ飛んだと共に、この作品に関わったクリエイターの皆さんに敬意を表するものだ。