Blog黒田院長のブログ

2023.07.06

049 ヘッドフォンオーディオ

今日聴いていた音楽
津軽じょんがら節 高橋竹山

 私が多大な信頼を寄せるオーディオ関連のブログに万策堂さんのサイトhttps://pansaku.exblog.jp/が有る。
 日本のオーディオブランドesotericのN05XDに関するレビューをだいぶ前にアップされていて、最近のハイエンドオーディオに関して私の感じることと殆ど同じ内容のことを書いていらした。要するに現代のハイエンド製品は馬鹿げた高額になって普通のオーディオ好きが夢をみられるレベルを逸脱している、というもの。セパレートアンプがそれぞれ800万とか1000万とか狂気としか思えないし、ついにはペアで一億円を超えるスピーカーもリリースされてしまった。システムを揃えたら優にマンションだって買える、それ程の価格を贖えたとしてその製品に何か称揚すべきもの、後世に伝え得べきものが本当に有るのか? という疑義を私は拭うことが出来ない。
これからの若い人がオーディオに興味を持ったとしても、と言うより音楽を良い音で聴くのはエジソンが臘管録音を発明して以来人間の根本的欲求に属する部分だと思うが、「こんな金額を捻出しなければ最高峰のオーディオは味わえないのか」と最初から諦めてしまうに違いないのではないか。しかもそういった超高額なオーディオセットが「聴いて楽しいのか?」というと必ずしもそうでは無いというところに根深い問題が有る。当たり前と言えば当たり前な話ではあるが、ハイエンドの機器は高額で有るが故に、ともすれば自分が聴いて楽しいかどうか、などという個々人の主観に依拠する曖昧な基準よりも「この金額を出すのに相応しい金のかかった音で有るか否か」が問われるものであって、意地の悪い言い方をしてしまえば「どうだこんな高い機材を買える俺は偉いだろう」というマウント取りの道具にしかならない製品もはっきり言って有る。大枚を叩いたとして自分の好む様な「カ イ カ ン」って音が得られるとも限らないのはこのオーディオ趣味の泥沼に首まで浸かっている諸兄弟には容易に賛同いただけるところだろう。
 先日さる大手AVメーカーを退職され、ガレージメーカーを立ち上げた友人が新製品を発表するというので東京国際フォーラムのオーディオ展に馳せ参じた私は、そんな閉塞感を打ち払う解を見つけたとかなり強い確信を抱いている。それは表題のヘッドフォンオーディオである。若い人には先刻ご承知であろうがイヤフォン、ヘッドフォンによって聴けるオーディオはそんじょそこらのスピーカー程度なら最初の一音を聴いただけでぶっ飛ぶ程の解像感、それに当たり前だが揺るぎ無い定位感をサラッと提示してみせる。勿論その代わりヴォーカルが頭の中に定位する頭内定位だったり音場の拡がり感や空間感の不足などの犠牲は生じるのだが、クラシックをメインに聴く方で無い限り私個人的にはさほど深刻な問題にはならない気がする。白状すると私は恐らくこの20年くらいヘッドフォンから遠ざかっていて、去年久々に現代最新の平面駆動型ヘッドフォンを試して驚愕したものだ。確かに費やすお布施は安くない。しかしキチンと作られたヘッドフォンアンプとバランス駆動されたヘッドフォンの産み出す音は高解像度で有りながら情も兼ね備えて我々の情緒を刺激する。
 長年の友人が開発したからと言って忖度する積もりも無く、ちゃんと作られた入力系機器とプリアンプ、好みのヘッドフォンを用意して、今回彼の会社DVAS https://www.deepvalley-audio.com/
が発表したヘッドフォン用パワーアンプDVAS Model 2にヘッドフォンをバランス接続した出音から得られる快感、満足感の度合いはスピーカーオーディオのコスパ(まあ趣味の世界に持ち込むのは嫌な言葉では有るが)を軽く凌駕する。是非このシステムで聴いて欲しいのはアナログレコードの音だ。私は古臭い価値観に縛られない若い人々にこそ、この出音を聴いて欲しいと切に願う。