Blog黒田院長のブログ

2022.09.08

036 リモート診療

リモート診療

今日聴いていた音楽

来生たかお「夢の途中」他

 長いようで短いようで、いつの間にか世界にあの忌々しいコロナ感染が蔓延して三年強の月日が経過している。かつて中世ヨーロッパで黒死病と言われたペストが流行した、魔女狩りが横行した、我が国に限っても明治の時代に結核で多くの若者が命を落とした、太平洋戦争でとてつもない数の死傷者が出た、そんな昔話をせずとも今この瞬間にウクライナの地で起きている戦争が終わらない、世界のあちこちで多くの人々が命を落とす事態が起きている、人間の営みの一部には何ら変わることが無い。

 さて、当院でもストレスフルなコロナ対応を強いられる毎日が現在進行形で続いているが、そんな中でリモート診療について導入すべきか、すべきでないか私はずっと考えている。

 導入のメリットとして最大のものは低コストで非接触型の診療形態を確立できることで、例えば皮膚疾患とか血液検査結果の説明とか脱毛症などの自費診療については親和性が高いと思うし、時間の壁はともかく距離の壁は容易に越えられる、極端に言えばネット環境さえ整備出来ればイタリア旅行していても東京のかかりつけ医に相談出来たり、例えば発熱外来でも患者さん側の心理的負担が少なくて済む、何よりも自宅やオフィスなど慣れ親しんだ環境に居て医師の診療が受けられる安心感は何ものにも代え難いだろう。 

 私が数々の予測されるメリットにも関わらずどうしても導入に踏み切れないでいるのは、やはり自分が還暦近いアラカン医者で「手当ってもんは手を当てて診察するんだ」という教育を長く受けて来たからに他ならないと。リモート診療では手元に体温計が有りませんと言われればそれまでで、予め患者さんに測っていて貰わなければ現在の体温も分からない、アップルウォッチでも持っていなかったら血圧も脈拍も心電図も酸素飽和度も分からない。それらのバイタルサインを超えて生体が発する様々な音や触った感触、更にこれはもう五感を超えた第六感としか説明出来ないが対面で患者さんの顔色、診察室に入る歩き方、話し方や呂律や結膜の色や、要するに自分の医師としての経験が発する警告信号がどこまでモニター越しに感知できるのかという危惧をどうしても拭えないのだ。

 現在、世界中のベンチャー企業や研究施設が簡単に生体信号をモニター出来るウエアラブルデバイスを開発している。例えばネット上で診療予約をしたら使い捨てのモニタリング機材が郵送されて、それを身につけて同期すれば診療機関の診察画面に各種バイタルサインが表示される、イメージとしては映画「エイリアン2」でエイリアンの巣に突撃する宇宙海兵隊のカメラ画像脇に個々のバイタルサインが出ているような、ですね。各人のモニターが恐ろしい勢いでNo Signalと化すあの怖さったら無かった、、とまあまたいつもの如く脱線してしまったが、そうこうあれこれ考えていると悩みは尽きない。そう言いながら我々は未来を目指して進んでいかなければならないのだろう。うんざりしながら一歩一歩ね。