Blog黒田院長のブログ
2021.09.24
- 023 オーディオ
マリーゴールド あいみょん 他
中学、高校生の頃はいっぱしのオーディオマニアであった。レコードは高くてなかなか買えないもんだから「FMレコパル」を必ず買って、今では死語になってしまった「エアチェック」に励んでいた。イエロー・マジック・オーケストラがアメリカで大評判になり、ニューヨークでのライブが放送された時はメタルテープを奮発した。ただ録音するだけじゃ能が無いと録音レベルにこだわってツマミを調整したりなんかして、あの頃は調節ツマミが一杯付いている機械こそが偉かったのだ。当時は周囲にもオーディオが趣味って連中は結構居て、ソニー、ヤマハ、ダイヤトーン、Lo-D、Aurex国産のオーディオメーカーも随分と元気が良かったような覚えがある。ナカミチなんてカセット(もはや死語か)・デッキは超々高級品で、とても学生風情が買えない高嶺の花だった。
周りからオーディオが姿を消し、いつの間にやら自分の中の熱も醒め、音楽を聴くという行為が呼吸や拍動と同じくらい自然になった反面、身も心も根こそぎ揺さぶられるような体験では無くなり、車を運転しながら流す程度の地位に成り下がって随分の時が経った。
それが15年ほど前、ひょんなきっかけでお付き合いの出来たオーディオ店に出入りさせて貰ううちに、自分では到底考えることも無かったオーディオセットを揃える事となった。Back in the saddle againである。別に古けりゃ古いほど良いと頑なに思い込んでいるヴィンテージオーディオ派では無い積もりだが、店主にじっくり聴かせて貰って一番自分の体に滲みたのはアルテックという古いアメリカ製スピーカーの音だった。820Aというこの木製箱のスピーカーは調べた限りでは70年前の製品で、これがまた未だに何の問題もなく使えるどころか、今出来の製品では望むべくも無いような野太くぶ厚い素敵な音を聞かせてくれる。こういうのを聴いちゃうと現代のスピーカーは、きっと物理的な特性では圧倒的に優れているのには違いないが随分冷静沈着で、超エリートだけどあまりお付き合いはしたくない知人の顔なんぞがチラホラ浮かぶから可笑しい。やっぱり私は俗な人間だから、音楽はやはりガツっとこっちにきて欲しい、美空ひばりやテレサテンや松田聖子にはイリュージョンで良いからそこで、そう、そこで歌っていて欲しいのだ。最近になってパワーアンプを程度の良い中古で手に入れた埼玉のガレージメーカー、テクニカルブレーン黒澤さんのステレオアンプに代えた。紛れもなく現代生まれのバリバリなハイファイアンプなんだが、私のスピーカーのようなヴィンテージ物も更に数段品位の上がった、何とも楽しいご機嫌な音がする。ただでさえコロナで家から出られないのに、こんなのを聴きながら寛いでいると益々出不精になるな、と呟きつつも、さて今夜は何をかけようかなとレコードやCDを繰りつつ考えている、それがまた楽しい。