Blog黒田院長のブログ

2023.03.29

044 ADOさん

今日聴いていた音楽
進撃の巨人OST YouSeeBIGGIRL/T:T 他

どれだけ周回遅れなんだと言われそうだが、数週間前Adoさんの歌う‘Tot Musica’ に脳天をぶっ飛ばされて以来他ジャンルの音楽が聴けなくなって困っている。ワンピースの映画最新作で重要な役割を果たす歌姫UTAの劇中歌だそうだ。「逆光」も「新世界」「私は最強」「風のゆくえ」も、それ言ったら以前の彼女のクレジット曲「ギラギラ」や「永遠のあくる日」、「踊」、とにかくこの人のヴォーカルはものすごいとしか表現しようが無い。ホイットニー・ヒューストン、アレサ・フランクリンやエラ・フィッツジェラルド、ああいうあたかもアメリカ車のV8エンジンみたいな圧倒的迫力でヒタヒタ来るのも凄いが、Adoさんの声は伸びやかでありながらそう簡単にはぶち切れない強靭さを伴っている。狂気と平穏、悪意と無垢、若さゆえの敵意と癒しのダイナミックレンジがとても広いのだ。あくまでも私の個人的感懐に過ぎないし音楽のジャンルは全くと言って良い程異なっても、その声が我等の眼前に登場する以前と以後で全く世界が変わってしまった感覚は中島みゆきさんが「時代」で世に出た時と匹敵する。御本人が顔出しは一切してなくて謎に包まれている当年とって二十何歳なのも、もしかして地下鉄で隣に座った女性が実はめちゃくちゃクールなヴォーカリスト、だったりするわけで現代社会に寄り添ったロマンが有る。
白状するが私は漫画のワンピースは読んだことが無い。ワンピースの世界を理解するために100冊以上の原作漫画とそのアニメ版と歴代の映画版を見ないといけない、その膨大さに立ち竦んでいるのが現状である。だからまだフィルムレッドも観ていないのだが、とはいえ「こち亀」も読まないといけないし、「スラムダンク」も映画版を見る前に勉強するよう教材の原作漫画全巻を家族から渡されているし、家の取り壊しで整理をしていたら発掘された横山光輝版「三国志」もこれまた全巻揃っている。英文を忘れないようにと年に一度原文で読むようにしている「ハリー・ポッター」全巻を読む季節も迫っているし、いやはや日暮れて道遠し。
もう2年ほど前に初めて彼女の「うっせぇわ」を聴いた時は、現役世代からのちゃんとしたリアルな感情、正当な怒りの吐露を目撃して、そりゃこうじゃ無くちゃフェアじゃないと思った。私はもうすぐ還暦を迎える歳で、彼女たちの世代からすれば「丸々と太ったその顔面にバツ」を喰らわせられる身ではあるし、「お爺ちゃんその話100回は聞いたよ」これから何十回何百回詰まらないメモリーを多分聞かせちまう側で、従ってこちらから若者の味方ヅラして擦り寄り媚びる積もりにもならないが、「うっせぇわ」を聴く以前には寡聞にも若者から(Z世代というらしい)ああいう怒りを目の当たりにする機会が無かった。それは私の単なる不勉強であるが、私達が若かった頃に比べ世界は長足の進歩を遂げた反面、若気の至りで犯した馬鹿気た悪戯さえ数分単位で世界に拡散されてしまう。誰も得しない、幸せにならないそんな闇の部分にちょっと油断したら飲み込まれるかもしれない若者のストレスは多分ネット普及以前の牧歌的な過去には存在しなかった類のものだ。
私は光も闇も、その全てを受け入れるしなやかさを彼女のヴォーカルから感じる。あくまでも個人的な感想に過ぎないが、その才能が日本野球界では収まりきれなくなってメジャーリーグに羽ばたいた大谷翔平選手のように、この方もいずれ英語や他の言語圏でもっと広い世界観を展開して行くのではないか。何とも楽しみであると共に、彼女が心身の健康を維持して歌い続けられることを願ってやまない。

ああそうだ、これもどんだけ周回遅れなんだが是非にも書き記しておかなきゃ、‘Tot Musica’を作った異能の持ち主を調べて澤野弘之さんの存在を知り、「進撃の巨人」組曲でまたまたぶっ飛ばされ、更に派生してアニメ版の挿入歌「僕の戦争」や「衝撃」「悪魔の子」にどうしようも無く打ちのめされる、まあ何だ、道を踏み外して何年遅れても真っ当に更生する道は有るってこったな。