Blog黒田院長のブログ

2022.07.06

033 今夜は最高

今日聴いていた音楽
Hold my hand from top gun maverick
Lady Gaga 他

 このところ昼は診療をし、夜はせっせと酒を飲み、心の栄養として本を読み、音楽を聴いて爽快な映画を楽しんでいた。いやもうトップガン・マーベリック、あれこそ極上の映画体験だ。私は医師である前に1人の映画好きのおじさんとして皆さんに忠告するけど、あの映画を初めて見るならどう間違ってもタブレットなんかで見ちゃいけない。行ける限りの出来るだけでかい画面と高音質の音響設備で見るべきだ。なんてことしながら楽しんでいたら、このページの更新が2ヶ月以上すっかりご無沙汰となってしまった。いや、正直言ってコロナの患者さんがまた増えてきてね、なかなか神経使うことが多かったのですよ。と言い訳から始まる今回。
 実は先日、都内某所でジャズピアニスト小曽根真さんのライブを友人2人と聴いてきた。小曽根さんと言えば誰がなんと言おうと日本最高峰、いやワールドクラスのピアニスト。有楽町大ホールだってどこだって満員にできる彼のライブをあんな間近で見れることすら本当にありがたいことなのに、今回はゲストがあの北村英治さんだ。北村さんは御年93歳、いまだにバリバリ現役のジャズクラリネット奏者だ。それこそ先日終わったNHKの朝ドラ「カムカムエブリバディー」の時代に、アメリカ将校クラブでジャズを演奏していた、まさにそういうお方。確かあのドラマの音楽監修もされていた、ジャズ界の伝説的なミュージシャンだろうと思う。私ゃ正直ね、ライブが始まるまではいくらなんでもそのお年ではフルで吹ききるのは辛いんじゃないかと思っていた。ステージでもし倒れられたら一応蘇生措置は心得てるから直ぐ駆けつけないとな、とか嫌な想像していたが、いやー、どうしてどうして、浅はかな私の危惧など最初の1曲目でぶっとびました。北村さんもお隣の80歳のトランペッター中村さんも、当然小曽根さんも滅茶滅茶ヤバい人たちでした、はい。歳をとられて演奏が鈍るどころかむしろ円熟の、歳を重ねなければきっと絶対に出せないような、あれは一体なんだろうね、丸いというか暖かいというか素晴らしすぎる音色に圧倒され、こちらも年甲斐もなく次次繰り出されるディキシーだったりニューオーリンズジャズだったり、セクステットの妙技にすっかり乗せられて拍手で手は痛いわ、ついでに涙と鼻水がちょちょ切れてしまった。
 アンコールでやって下さったジャズスタンダードの名曲「Body&Soul」、あの北村さんの甘く柔らかいクラリネットソロは、多分私の音の記憶に一生残るんだろうと思う。私の手元にはミェチスワフ・ホルショフスキというポーランド出身のピアニストがなんと齢100歳、だったかな、そのくらいのお年で吹き込んだレコードがあるが、人が演奏しているのではなく、音楽が自然と湧き上がって流れてくるあの感覚は、クラシックとかジャズとかのジャンルを超えて、北村さんの演奏でも全く同じに思えた。勿論ホルショフスキ氏は既に亡く、我々はもうコルトレーンやルイ・アームストロングやマイルスも生じゃ聴けない以上オーディオ装置で音楽を聴くのもそれはそれで良いけど、どんな高級機器で再生してもやっぱりあの熟練のミュージシャン達がリアルタイムで作り出すライブ感には勝てないのだよな、とまた今日もとりとめない話になってしまった。